2011年9月2日金曜日

コトバの真実味

一昨日、出社途中に愛車のタイヤがバーストした。両輪。けっこうな音を立てて・・・。
皇居前だったので、チャリを止める事も出来ず・・・。
警備員に聞いては流され、聞いては流され。
でも、3人目のおやじが「ちょっと離れてればイイよ。」って。おやじ、ありがたう。

その日、タクシーに乗せて帰ろうとしたが、生憎の雨。
「濡れた自転車を後部座席に乗せてもいいですか?」の質問に全員No。
そりゃあ仕方無いわな。

翌日、なんとか雨も止み、タクシーで同じ質問をする。
「自転車載せてもいいですか?」





僕は、その日、とても穏やかな気持ちで家に帰る事が出来た。
その運転手さんに関する話。

年齢は、60~70歳くらい。
イイ感じにハゲた頭に真っ白な髭をほんの少しだけ蓄えていた。
物腰は非常に柔らかく、僕まで話し方を併せてしまうような丁寧な口調。
運転は危険を事前に察知して、充分な車間距離を取る。割り込みが当たり前の如く。

彼との会話は自転車の話から、娘さんの話、そして、仕事の話へ。

「私はね、大方この仕事が楽しいと思っています。
 時折、怖い思いをする時もありますが、それを加味しても楽しいですよ。
 何故なら、この仕事は人と人とのめぐりあいだからです。」

「私はこの仕事をしている以上、穏やかである必要があります。
 何故なら、お客様にとって私が鏡になるからです。
 お客様は、様々な感情を持ってタクシーに乗られる。
 どのようなお客様にも、気持ち良く乗って頂きたい。私の心がそれを邪魔してはいけません。」

僕は聞いた。
「お家の中でも運転手さんは穏やかであろうと心掛けていらっしゃるのですか?」

「私は思っています。せっかく結婚をしたのだから仲良くしたい。
 そう思ってからは一度も喧嘩をしていませんよ。」

「勿論、心がざわつく時はあります。大切なのは、相手より一つ上から見る事です。
 だから、まず相手の言う事を全て聞き入れなさい。
 ああ、あなたはそういう風に考えるのですね。と、受け止めて理解しようとしなさい。
 必死に受け止めて受け止めて、それでも納得出来ない時、その時は・・・。
 その時は、相手は既に忘れていますよw。」

「ただ、これは理屈の話です。
 行動として、私は無意識の内に家内を褒めています。
 こんなおいしいご飯を食べられるなんて、僕はなんて幸せなんだ。いつもありがとう。
 そんな事を無意識の内に私は家内に言っています。
 家内は「また始まったか。」と言って呆れていますけどw。」


相手を受入れる。よく聞く話ではあるが、実践する事は非常に難しい。
特に、身近になればなるほど、些細な事すら過敏に反応してしまう。

だからこそ、経験から感じ、学び、継続し、慣習化する。いつかそれを人間性とする。
ヒトを形成する奥底にどっしりと構えた穏やかさを横で見ながら僕は笑い続けました。
素敵でした。素敵という言葉がパズルのラストピースのようにぴったりとはまるヒトでした。


最後に、家の前で車を降りようとする僕に運転手さんはこう言いました。

「また次回、めぐり逢える事を楽しみにしております。お休みなさい。」

洒落乙か!!!w


家に到着したのは午前2時半。気持ちよく即寝できた。

運転手さん、ありがとう。

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